ふわふわの毛にくりっとした瞳。家庭犬として大人気のトイプードルが、実は警察犬として活躍しているのをご存じですか?
「警察犬=大型犬」というイメージを覆すこの取り組みは、近年日本各地で注目されています。今回は、トイプードルが警察犬として採用される背景や、実際に任務にあたる事例、その魅力と課題について紹介します。
警察犬といえば…なぜ今トイプードル?

従来、警察犬といえばジャーマンシェパードやラブラドール・レトリバーが主流でした。大型犬は筋力やスタミナが求められる場面で活躍しやすく、長年定番とされてきたからです。
しかし近年、日本では行方不明者の捜索やイベント時の警備など、より多様な任務に対応するため、小型犬の導入が進んでいます。その代表格がトイプードルです。
特に高齢者の増加に伴い、認知症による行方不明者の捜索件数も増加。住宅地や山林、狭い通路など、身体の小さな犬が活躍できる場面も広がってきました。
トイプードルの“警察犬力”とは?

1. 優れた嗅覚
トイプードルは嗅覚が非常に鋭く、麻薬探知や捜索活動にも適しています。大型犬と比べても引けを取らない能力を持つことが、試験などを通じて証明されています。
2. 高い知能
犬種の中でも知能はトップクラス。指示理解や反応スピードが早く、訓練成果が現れやすいのも特徴です。
3. 小さな体が活きる現場
小柄な体格は、狭い通路や瓦礫の下に入り込む捜索などで非常に有利。災害時や住宅街での行動において、大型犬にはない機動力を発揮します。
4. 人に親しみやすい外見
警察犬とはいえ、見た目は可愛らしく威圧感がありません。そのため、防犯イベントや子ども向けの啓発活動でも好印象を与える存在です。
実際に活躍しているトイプードルたちは?

茨城県警のトイプードル「あんず」
2015年に家庭犬から警察犬試験に合格。被災地での行方不明者捜索や、高齢者の所在確認などに活躍。特に住宅街や山間部などでの活動に強みを発揮しています。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20250613-OYT1T50049/
鳥取県や京都府でも採用
鳥取県警では保護犬出身のトイプードルが捜索活動に従事。京都府でも麻薬探知の業務で採用され、小型犬ならではの機動力を評価されました。
これらの事例は、「大型犬でなければ警察犬になれない」という従来のイメージを大きく覆すものでした。
トイプードルが向いている任務

行方不明者の捜索
特に認知症高齢者の捜索では、住宅地や施設の周辺、草むらや低木の隙間など小型犬の特性が活かされます。
危険物の探知
空港や駅など、人混みの中でも威圧感を与えずに行動できるため、乗客へのストレスを最小限に抑えた業務が可能です。
防犯・啓発イベント
見た目が可愛らしく、市民との距離が近いトイプードルは、子どもや高齢者に対する防犯意識の啓発にも効果的。地域との関係づくりにも一役買っています。
トイプードルが警察犬としての課題は?

もちろん、全てが順風満帆というわけではありません。
体力・持久力の限界
長時間の任務や悪天候下での活動は、大型犬に比べて不利になることも。体調管理にはより注意が必要です。
訓練コストと時間
小型犬には小型犬なりの訓練プログラムが必要であり、専門のトレーナーや適した飼育環境も求められます。
先入観との戦い
「可愛い犬が警察犬なんて」という偏見も一部に残っています。外見だけでなく、能力と成果で信頼を勝ち取っていく必要があります。
小さな警察犬がもたらす大きな変化
トイプードルの警察犬としての採用は、単なる話題性にとどまりません。
それは「見た目や大きさにとらわれず、本質を見抜く」という社会全体の価値観にもつながります。
また、高齢社会・災害リスクの増大という日本特有の課題に対して、柔軟に対応していく警察の新たな姿勢も象徴しています。
トイプードルたちは、小さな体ながらも「現場で使える本物の戦力」であることを証明し始めています。
まとめ
トイプードルが警察犬になるというのは、かつては考えられなかった発想です。しかし現在、その高い知能・機動力・親しみやすさを武器に、現場で実際に成果を上げています。
もちろん、すべてのトイプードルが警察犬になれるわけではありません。訓練・性格・環境など、さまざまな条件を満たす必要があります。それでも、「可能性は十分にある」という事実は、多くの人にとって希望となるはずです。
トイプードルの警察犬たちは、見た目の可愛さだけでは語りきれない“本当のすごさ”を、私たちに教えてくれているのかもしれません。