近年、トリミングサロンで「柴犬はお断りしています」と言われるケースが増えてきました。大切な家族の一員である柴犬をきれいにしてあげたいだけなのに、なぜ断られるのでしょうか?
この記事では、柴犬がトリミングを断られる背景とその理由、飼い主としてできること、今後の向き合い方について詳しく解説します。
柴犬についての動画は私のYouTubeでも公開しています。
なぜ柴犬がトリミングを断られるのか?

柴犬という犬種は、日本では非常に人気がありますが、トリマー業界では「扱いが難しい犬種」として知られています。そのため、一部のトリミングサロンでは柴犬の施術を断るケースが見られます。では、具体的にどのような点が「難しい」とされているのでしょうか?
1. 柴犬特有の性格
柴犬は縄張り意識が強く、自立心が高い犬種です。そのため、「他人に体を触られること」に対して警戒心を強く持つ傾向があります。特に口周りや足先、耳などの敏感な部位に触れられると怒ったり、噛みつこうとすることもあります。
トリミングは、全身を丁寧に扱う繊細な作業です。そのため、少しのストレスや恐怖心で激しく抵抗する柴犬を無理に施術することは、犬にもトリマーにも大きなリスクを伴います。
2. トリミング中の予測不能な行動
柴犬は普段は大人しくても、突然スイッチが入って暴れ出すことがあります。「雷を聞いた瞬間」「爪を切ろうとした時」「耳掃除をしようとした瞬間」など、何かのきっかけで怒り出すケースがあるのです。
こうした行動はトリミング中の安全性に大きく関わるため、スタッフの人数や時間、対応力に余裕がないサロンでは施術自体をお断りするしかないという判断に至るのです。
3. 噛み癖や過去のトラウマ
過去にトリミング中に強い恐怖を感じた経験がある柴犬は、それを覚えていて、次回以降の施術時に激しい拒絶反応を示すことがあります。また、家庭内でのしつけが不十分な場合、「嫌なことがあると噛む」という学習をしてしまっていることも。
4. 高齢による体力・健康面のリスク
10歳を超える高齢の柴犬は、若い頃と比べて体力が落ちており、トリミング中に大きなストレスを感じやすくなります。加えて、関節の痛みや持病などがある場合、長時間の施術によって体調を崩すリスクも高まります。
実際に、10歳以上の柴犬を連れて新しいトリミングサロンを予約しようとした際、「高齢犬の新規受付はしていません」と断られた経験を持つ飼い主の声も多く聞かれます。これは犬の健康と安全を最優先に考えての対応であり、万が一の事故や急変を避けるための配慮とも言えます。
高齢の柴犬には、短時間で終わる施術や、事前に体調確認をしてくれるサロンを選ぶことが重要です。また、かかりつけの動物病院と連携している店舗を探すのも安心材料の一つでしょう。
こうした犬を扱うには、高度な技術と冷静な判断力が必要です。しかし、すべてのトリマーがそのレベルにあるとは限らないため、「無理に受けて事故が起きるより、最初から断る」という選択をするサロンも多くあります。

柴犬のトリミングを断られた時、飼い主ができること

大切な柴犬がサロンに断られてしまったからといって、落ち込む必要はありません。今できること、そしてこれからのために準備できることがあります。
1. 柴犬に慣れているサロンを探す
すべてのサロンが柴犬を断っているわけではありません。「柴犬専門」「和犬対応可」などと明記しているサロンは、柴犬の扱いに慣れており、犬にとっても飼い主にとっても安心できる環境が整っています。
口コミやSNSで「柴犬で断られたけど、ここは大丈夫だった!」という情報を探してみるのも一つの手です。
2. 家庭でできるケアを少しずつ取り入れる
自宅でのブラッシング、シャンプー、爪切りなど、基本的なケアを少しずつ始めてみましょう。いきなり全身を洗おうとせず、まずは短時間から始め、犬が「お手入れは怖くない」と思えるように工夫することが大切です。
毎日ではなく、週に1回、5分だけブラシをかけることからでもOKです。おやつを使って「いい子だったね」と褒めてあげれば、徐々にトリミングに対する抵抗感が薄れていくはずです。
3. 問題行動がある場合はトレーナーに相談
噛みつき、吠え、暴れるといった行動が見られる場合は、専門のドッグトレーナーに相談することをおすすめします。自己流での対応では、かえって問題が悪化することもあります。
トリミングだけでなく、日常生活そのものが快適になるように、犬との関係性を見直す良い機会になるかもしれません。

柴犬を育てるということ

柴犬は誇り高く、我が強く、それでいてとても愛らしい犬です。その独特な気質を理解し、受け入れることが、飼い主としての大切な責任です。トリミングを断られたからといって「うちの子が悪い」などと落ち込む必要はありません。
むしろ、柴犬という犬種を深く理解しているからこそ、無理に施術をしないという選択をしてくれるサロンの姿勢は、とても誠実なものだとも言えるでしょう。
私たちにできるのは、柴犬が少しでもリラックスしてお手入れを受けられるように環境を整えること。そして、犬の性格に合ったプロを見つけ、共に歩んでいくことです。
まとめ
柴犬がトリミングを断られる背景には、犬種特有の性格や行動の難しさ、そして安全面への配慮があります。大切なのは、それを「拒絶」と受け取るのではなく、「理解」として捉え、犬にとって最善の方法を一緒に探していく姿勢です。
飼い主としてできることはたくさんあります。家庭でのケアから始めるのも良し、柴犬に理解のあるプロと繋がるのも良し。大事なのは「うちの子を守りたい」「ストレスのない生活を送ってほしい」という愛情です。
柴犬と暮らすということは、その個性と向き合うことでもあります。その道のりは時に大変かもしれませんが、深い絆が生まれるきっかけにもなります。断られることを恐れず、一歩ずつできることから始めていきましょう。