柴犬は日本原産の人気犬種で、その凛々しい見た目と忠誠心から多くの人に愛されています。しかし、ネット検索では「柴犬 飼ってはいけない」といった不安を感じる言葉も見かけます。これから柴犬を迎えようと考えている人にとって、「本当にうまく飼えるのか?」「自分に合った犬種なのか?」と悩むのも無理はありません。
この記事では、柴犬が「飼ってはいけない」と言われる理由を冷静に整理しつつ、それでも柴犬を愛してやまない人たちが感じている本当の魅力についてもお伝えしていきます。飼う前に知っておきたいポイントを押さえれば、後悔のない犬との暮らしが始められるはずです。
柴犬を飼ってはいけないと言われる5つの理由

柴犬は見た目の可愛らしさや日本犬らしい凛々しさが魅力的ですが、実際に飼育してみると、想像以上に手がかかる犬種でもあります。
そのため、インターネット上では「柴犬は飼ってはいけない」といった声が多く見られることも。ここでは、そう言われる理由を5つに分けて紹介します。すべてがネガティブというわけではありませんが、事前に知っておくことで後悔のない選択ができます。
頑固でしつけが難しい
柴犬は非常に自立心が強く、頑固な性格をしています。飼い主の命令に素直に従うというより、自分で判断して行動するタイプの犬です。そのため、他の犬種と比べてもトレーニングに時間がかかる傾向があります。特に初めて犬を飼う人にとっては「言うことを聞かない」「怒ってもしつけが入らない」と感じてしまうかもしれません。
また、柴犬は飼い主との信頼関係が築けないと反発することも多く、厳しく叱るようなしつけ方は逆効果になりやすいです。褒めて伸ばす、一貫性のある態度で接するなど、飼い主側にも根気と知識が求められます。短期間で結果を求めるのではなく、長い目で見て育てていく覚悟が必要です。
警戒心が強く他人に懐きにくい
柴犬は本能的に警戒心が強く、知らない人や犬に対して距離を置く性質があります。そのため、来客時に吠えたり、散歩中に他の犬とトラブルになったりすることも。また、小さな子どもがいる家庭では、無邪気に近づかれた柴犬がストレスを感じてしまうこともあるため、注意が必要です。
社会化トレーニングを子犬の頃から丁寧に行えば、ある程度の改善は見込めますが、それでもフレンドリーな性格になるとは限りません。犬を「みんなに愛される存在」に育てたいと考える人にとっては、柴犬の性質は理想と大きく異なる可能性があります。家族以外には懐かない、という個体も少なくありません。
被毛の手入れが大変
柴犬はダブルコートと呼ばれる二重の被毛を持っており、特に換毛期(春・秋)には大量の毛が抜けます。毎日のブラッシングや定期的な掃除が欠かせないため、忙しい人やアレルギー体質の人には向いていない可能性があります。見た目以上にお手入れの手間がかかる犬種です。
また、毛が舞いやすいため、室内で暮らしていると服やソファ、カーペットなどあらゆる場所に毛が付きます。特に長時間家にいることが少ない人や掃除をこまめにできない人にとっては、ストレスの原因にもなりかねません。柴犬との暮らしは、想像以上に掃除との戦いになるということを覚悟しておく必要があります。
運動量が多く散歩が必須
柴犬は見た目以上にエネルギッシュで、毎日の散歩が必要です。運動不足になるとストレスが溜まり、無駄吠えや家具を壊すなどの問題行動に発展することもあります。1日30分〜1時間程度の散歩や遊び時間が確保できない家庭では、飼育が難しいと言えるでしょう。
また、柴犬は単なる「運動」ではなく、嗅覚を使った探索や頭を使う遊びも必要とする犬種です。単調な散歩だけでは満足できず、精神的に不安定になってしまうこともあります。仕事や育児で忙しい毎日を過ごしている人にとって、柴犬の活動量に付き合うのは簡単なことではありません。
自立心が強くベタベタしない
柴犬は「猫のような性格」と言われることもあり、飼い主に常にくっついているタイプではありません。甘えるよりも一人で過ごす時間を好む傾向があり、「犬=甘えん坊」と考えている人には少し寂しいかもしれません。この距離感を理解できないと「懐いてくれない」と誤解してしまう可能性もあります。
とはいえ、柴犬なりの愛情表現もあります。飼い主のそばに静かに座っている、目をじっと見つめる、などさりげない仕草で信頼を示してくれます。このような「控えめな愛情」に気づける人であれば、柴犬との関係はとても深く、かけがえのないものになります。スキンシップが苦手でも愛情はあるという前提を理解しておくことが重要です。

柴犬の性格を理解せずに飼うと起きるトラブルとは

柴犬は独特な性格を持つ犬種であり、その魅力の裏には「しっかり理解して接しないと大変なことになる」という側面があります。特に柴犬の本能や性格特性を知らずに飼い始めた場合、飼い主側がストレスを感じたり、犬が不安定になったりと、さまざまなトラブルが発生するリスクがあります。
噛み癖や攻撃的な行動に発展することも
柴犬は基本的に忠誠心が強く、信頼した相手には深い愛情を示す犬種です。しかし、一方で縄張り意識が非常に強く、自分のテリトリーに対して他人や他の犬が侵入すると、強く警戒して攻撃的になることもあります。飼い主がしっかりとその性格を理解し、適切にコントロールしないと、無駄吠えや噛み癖などの問題行動が出ることも。
また、柴犬は我慢強い一方で、嫌なことに対してはハッキリと拒絶の意志を示す傾向があります。しつけの一環として無理やり体を押さえつけたり、大きな声で叱るような行為は、かえって犬の防衛本能を刺激してしまい、攻撃的になる原因になります。こうした行動は、単なる「わがまま」ではなく、ストレスや誤解からくる行動であることも多く、柴犬と暮らすにはその心の動きを理解することが非常に重要です。
子どもや高齢者との相性が悪い場合も
柴犬は基本的に飼い主には忠実ですが、突発的な刺激や予測できない動きには非常に敏感です。そのため、小さな子どもが無邪気に触ろうとした際や、大きな声を出したときなどに、柴犬が驚いてしまい、思わぬトラブルに発展することもあります。子どもが柴犬の嫌がることに気づけない場合、噛みつきなどの事故につながる可能性もゼロではありません。
また、高齢者にとっては柴犬の運動量や力強さに対応しきれないこともあります。特に散歩中に強く引っ張られたり、急な動きをされたりすると、転倒などのリスクも出てきます。家庭に子どもや高齢者がいる場合、柴犬の性格や行動パターンを十分に考慮したうえで、環境整備としっかりした教育が必要です。
「懐かない」と誤解されることで愛情が冷めることも
柴犬はスキンシップが少なく、飼い主にベッタリするタイプではありません。これが原因で「なんか懐いてくれない」「うちの子は失敗だったのかも」と誤解し、飼い主側の愛情が薄れてしまうケースも少なくありません。本当はしっかり飼い主を観察し、そっと寄り添ってくれているのに、その“控えめな愛”を見逃してしまうのです。
犬との関係は信頼と理解がすべて。柴犬の性格を知らずに「可愛いから」「日本犬でかっこいいから」という理由だけで飼い始めると、ギャップの大きさに後悔してしまう可能性があります。だからこそ、柴犬の特徴をしっかりと理解し、その個性を受け入れられる人が飼うべき犬種と言えるでしょう。

柴犬に向いている人・向いていない人の特徴

柴犬を飼うにあたって、自分の性格やライフスタイルが柴犬に合っているかどうかを見極めることはとても重要です。犬にも人にも向き・不向きがあります。「飼いやすい犬種」とはよく言われますが、柴犬の場合、それは決して万人向けという意味ではありません。ここでは、柴犬に向いている人と向いていない人の特徴を具体的に解説します。
柴犬に向いている人の特徴
まず、柴犬に向いているのは「犬との関係性に忍耐力と深い理解を持てる人」です。柴犬は基本的にプライドが高く、甘えん坊な性格ではないため、すぐに懐いたり、常にべったり寄り添ってくるようなことは少ないです。最初は距離を取りたがることも多く、信頼関係を築くには時間がかかります。
そんな柴犬にとって理想的な飼い主は、犬のペースを尊重し、ゆっくりと時間をかけて距離を縮められる人です。さらに、感情的にならず冷静に対応できること、問題行動が起きたときにも怒鳴ったり叩いたりせず、原因を探って対応できる人が向いています。
また、柴犬は運動量が多いため、毎日の散歩や遊びの時間をしっかり確保できる体力と生活リズムを持っていることも重要です。週末だけの散歩では足りず、雨の日も欠かさず動くことが求められます。さらに、柴犬は抜け毛も多く、掃除やブラッシングなどの日々のケアを怠らず行える「マメな人」も好相性でしょう。
柴犬に向いていない人の特徴
一方で、柴犬に向いていないのは「すぐに結果を求める人」や「犬に対して愛情を押しつけがちになる人」です。たとえば、すぐに懐いてくれることを期待していたり、抱っこして可愛がることが当然だと思っている人には、柴犬のクールな距離感は戸惑いの原因になります。
また、叱ることで言うことを聞かせようとするタイプの人も注意が必要です。柴犬は非常に賢く、自分の意思を強く持つ犬種です。理不尽に怒られると、反発心を持ちやすく、かえって問題行動を悪化させる恐れがあります。支配的な飼い方よりも、「信頼を築くこと」を重視できる人が向いています。
加えて、室内が常に清潔でないと気が済まないような人や、抜け毛やニオイに神経質な人にとっては、柴犬との生活はややストレスに感じることがあるかもしれません。柴犬は換毛期に大量の毛が抜けますし、独特の体臭が気になる人もいるでしょう。

柴犬を迎える前に知っておくべき飼育のポイント
柴犬は日本犬としての誇り高い気質を持ち、しつけや日々の接し方にも独自の工夫が必要です。ただ「可愛いから」という理由だけで迎えてしまうと、思いがけない苦労やすれ違いが生じる可能性があります。ここでは、柴犬を家族として迎える前に、最低限知っておきたい飼育のポイントをわかりやすく紹介します。
子犬期からのしっかりとした社会化が鍵
柴犬は非常に警戒心が強く、見知らぬ人や犬に対して攻撃的になる傾向もあるため、社会化のタイミングが非常に重要です。特に生後2〜4ヶ月の間に、さまざまな人、場所、音、犬と触れ合わせることで、柔軟な性格に育てることが可能になります。
無理やり抱っこさせたり触らせるのは逆効果
怖い思いをすると「人間=怖い存在」と学習してしまう
安全な距離感で徐々に慣れさせることが大切
散歩と運動は「量より質」を重視
柴犬は体力がある犬種ですが、ただ長く歩けば良いというわけではありません。脳も身体もバランスよく刺激することが、問題行動の予防や心身の健康につながります。
におい嗅ぎを取り入れた散歩(情報収集が脳の刺激に)
短時間でもしっかり集中するトレーニング散歩
家の中でできる知育玩具やトリック遊び
食事や健康管理にもこだわりを
柴犬は皮膚トラブルやアレルギー体質の子も少なくないため、日々の食事やケアに対する意識も必要です。特に市販のドッグフードだけに頼るのではなく、体質に合ったフードを選んだり、添加物の少ないおやつを用意したりといった工夫が大切です。
月1回のシャンプー(皮膚が弱い子はもっと慎重に)
毎日のブラッシング(換毛期は1日2回が理想)
耳や目のチェック・歯のケアも習慣に
独立心が強いからこそ、信頼関係が重要
柴犬は「人の命令に従う」ことよりも、「信頼できる人の言うことなら聞く」という考え方を持っています。命令口調や力で押さえつけるしつけは逆効果。リーダーシップよりも“信頼”を意識した接し方が効果的です。
名前をたくさん呼ぶ、褒める回数を意識する
一貫性のあるルールを守る
犬が怖がる行動(叩く・怒鳴る)は絶対NG
それでも柴犬を飼いたいと思うあなたへ

ここまで読んで「やっぱり柴犬は大変そう」「自分には向いていないかも」と感じた方もいるかもしれません。それでもなお、柴犬を家族として迎えたいと思う方へ──このセクションでは、柴犬を飼う覚悟と、それでも得られる大きな喜びについてお話しします。
大変なだけじゃない、深まる信頼の尊さ
柴犬は確かに簡単な犬種ではありません。懐きにくい、人を選ぶ、頑固で気難しい……そんなイメージが先行することも多いですが、信頼関係を築いたあとの柴犬は、他の犬種では味わえない“特別な絆”を感じさせてくれる存在です。
誰にでも尻尾を振るわけではない分、飼い主にだけ見せる表情や仕草は、愛おしさが倍増します。ツンデレな態度、ちょっと拗ねたような目線、それでも一歩ずつ近づいてくれる姿に、飼い主は心をつかまれていきます。
一生のパートナーとして寄り添う覚悟
柴犬の寿命はおよそ12〜15年といわれています。この年月を、ただ「可愛いから」ではなく、その性格も含めて愛せるかどうかが飼い主としての資質につながります。
柴犬と暮らすには、こんな覚悟が必要です:
自分の時間を犠牲にしてでも、日々の散歩を欠かさない
感情的にならず、犬の目線で考える余裕を持つ
問題があったとき、犬を責めるのではなく「なぜそうなったのか」を一緒に考える
柴犬を迎える前にできること
実際に柴犬を飼い始める前に、「本当に自分に合っているのか?」を見極めるためのステップもあります。
保護犬施設での一時預かりボランティアに参加する
柴犬を飼っている人のSNSやYouTubeを日常的にチェックする
ブリーダーやペットショップで話をじっくり聞いてみる
書籍や信頼できるサイトで柴犬の習性を事前に学ぶ
感情だけでなく、「知識+覚悟+経験」を持って迎えることで、柴犬との暮らしはきっとかけがえのないものになります。
柴犬との暮らしは、人生を豊かにする
柴犬はあなたの指示にすぐ従う“従順なペット”ではないかもしれません。しかし、だからこそ彼らは“対等なパートナー”としての魅力を持っています。
思い通りにいかない日々の中に、ふと見せてくれる信頼のしぐさ、寄り添ってくれる温かさ。柴犬との関係は、まるで人間同士の信頼関係を築くかのような、繊細で、奥深いコミュニケーションで成り立っています。
その日々は、きっとあなたの人生に新しい視点や感情をもたらしてくれるはずです。
まとめ
柴犬は、日本人にとって非常に馴染み深い存在でありながら、「飼ってはいけない」と言われることもある難しい犬種です。警戒心の強さ、独立心、頑固さ、そしてしつけの難しさ。柴犬を迎えるには、しっかりとした覚悟と継続的な努力が求められます。
しかし、それらを乗り越えた先には、他のどんな犬種にも代えがたい、特別な絆や信頼関係が待っています。柴犬は誰にでも懐くわけではない分、飼い主にだけ見せてくれる表情や態度は、かけがえのないものです。
見た目の可愛さや「日本犬だから」という理由だけでなく、柴犬の性質や本質を理解し、受け入れる気持ちを持って家族として迎えることができれば、柴犬との暮らしはきっとあなたの人生を豊かにしてくれるでしょう。