短い足と丸いおしり、笑っているような顔立ちで多くの人に愛されている犬種「コーギー」。そんな見た目の可愛らしさとは裏腹に、「とても頭がいい」「驚くほど賢い」と感じる飼い主は少なくありません。確かに、日常生活の中で見せるコーギーの行動には、感心させられることが多々あります。
では、なぜコーギーは「賢い犬」と言われているのでしょうか?犬の知能にはさまざまな種類がありますが、コーギーが得意とするのは人の指示を理解し、自分で状況を判断して動く「作業知能」と呼ばれるものです。この記事では、コーギーの知能の特徴、賢さが発揮される場面、さらにその知性ゆえの注意点まで、実際の飼い主目線で詳しくご紹介していきます。
牧羊犬としてのルーツが、コーギーの知能を育てた

コーギーの知能の高さは、その歴史的な役割に深く関係しています。もともとコーギーは、イギリスのウェールズ地方で「牧羊犬」として活躍してきた犬種です。牛や羊の群れを追い、誘導し、ときには一頭だけ離れてしまった個体を見つけて戻すなど、状況に応じた判断力が求められていました。
このような作業を行うためには、単に人の命令を待つだけでは務まりません。飼い主の表情や声のトーンから意図を読み取る力、自分で考えて動く判断力、集中力、そして記憶力が必要になります。こうして何世代にもわたり「賢い個体」が選ばれて繁殖された結果、現代のコーギーにも高い知能が受け継がれているのです。
コーギーのしつけのしやすさから実感する賢さ

コーギーは、しつけが比較的しやすい犬種と言われています。特に基本的なコマンド(「おすわり」「待て」「おいで」など)に対する理解が早く、覚えたことを長く記憶してくれます。我が家のコーギーも、トイレトレーニングにかかった期間はたったの2週間ほど。初めて犬を飼う私にとっては、想像以上にスムーズで驚きました。
また、「一度教えたことを忘れない」だけでなく、「教えていないのに察して動く」ところにも驚かされます。たとえば、散歩に行く準備をしていると、まだリードを見せていなくても玄関に向かってスタンバイしたり、出かける支度を始めた私の雰囲気を察して自分のハウスに入ったりするのです。
こうした行動は、ただ賢いというだけでなく、「人間と一緒に暮らす力」に長けている証拠でもあります。人の生活リズムや感情を読み取って、自ら行動を調整できるのは、高い知能を持つ犬に共通する特徴です。

知能ランキングでも高評価。世界的にも認められる賢さ

犬の知能を研究したことで有名なカナダの心理学者スタンレー・コレン博士の著書『犬の知能』では、犬種別に知能ランキングを発表しています。このランキングは「命令を何回で覚えるか」「どれだけの確率で命令に従うか」といった基準で評価されており、非常に信頼性の高い指標とされています。
その中で、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークは第11位にランクイン。これは、数百種ある犬種の中でもトップクラスの知能を持つ犬という評価です。ちなみに、1位はボーダーコリー、2位はプードル、3位はジャーマン・シェパード。これらの犬種と比べると少し下に見えるかもしれませんが、コーギーのように「家庭犬」としても「作業犬」としてもバランスよく適応できる犬は多くありません。
順位 | 犬種 |
---|---|
1位 | ボーダー・コリー |
2位 | プードル |
3位 | ジャーマン・シェパード |
4位 | ゴールデン・レトリーバー |
5位 | ドーベルマン |
6位 | シェットランド・シープドッグ |
7位 | ラブラドール・レトリーバー |
8位 | パピヨン |
9位 | ロットワイラー |
10位 | オーストラリアン・キャトル・ドッグ |
11位 | ウェルシュ・コーギー・ペンブローク |
このランキング結果からも、コーギーの知能の高さは世界的に認められていることがわかります。
コーギーは頭がいいからこその「困りごと」もある

「コーギーは賢いから飼いやすい」と聞いて飼い始めた方も多いと思いますが、実は賢いからこそ「ちょっと厄介」な一面もあります。というのも、知能が高い犬は良くも悪くも“頭を使いたがる”からです。
たとえば、退屈な時間が続くと「なにか面白いことをしよう」と考え始めます。それが、飼い主が喜ぶ遊びならいいのですが、多くの場合は「ソファのクッションを噛む」「ゴミ箱をあさる」「わざと吠えてみる」など、人間にとっては困る行動になりがちです。これはしつけの問題というより、“刺激が足りていない”サインともいえるでしょう。
実際、我が家でも仕事が忙しくて構ってあげられない日が続いた時、コーギーが自分で冷蔵庫の下にボールを転がし、「取ってよ」とこちらをじっと見てくることがありました。あれも一種の「頭脳戦」だったのかもしれません。

知能が高い犬と暮らすということ
コーギーのような賢い犬と暮らす上で大切なのは、「叱る」よりも「工夫する」ことです。いたずらされたからといって感情的に怒るのではなく、「どうすれば退屈させずに済むか」「もっと知的好奇心を満たしてあげられるか」と考えることが、飼い主の役割になります。
具体的には、以下のような方法が有効です
- 知育トイ(パズル型の餌入れなど)を使って、遊びながら頭を使わせる
- 散歩中に「止まる」「曲がる」「Uターン」などコマンドを加えて、脳への刺激を増やす
- 新しいトリックや芸を少しずつ教えていくことで、成功体験を積ませる
特にコーギーは「人に褒められるのが好き」という性格を持つ子が多いため、上手にできたときはたくさん褒めてあげると、より自信を持って成長してくれます。
一方で、同じことの繰り返しにはすぐに飽きてしまう傾向もあるので、少しずつ新しい刺激を取り入れていくこともポイントです。
コーギーに向いている飼い主のタイプとは?
コーギーの賢さをしっかり活かすには、飼い主側にもある程度の“意識”が求められます。たとえば、「ただ一緒にいるだけでOK」というタイプよりも、「一緒に何かをして楽しみたい」と考える人の方が、相性が良いでしょう。
さらに、教えることが好きな人、日々の変化や成長に喜びを感じられる人にとっては、コーギーは理想的なパートナーです。逆に、「毎日同じことの繰り返しがラク」「静かにしてくれればいい」というタイプの飼い主には、コーギーの活発さや好奇心の強さが負担に感じられるかもしれません。
もうひとつ、注意しておきたいのは「自分で考えて動ける=頑固になることもある」という点です。コーギーはときに、「わざと無視する」「自分のペースで動く」といった“マイペース”な態度をとることがあります。こうしたときに叱りつけるのではなく、信頼関係の中でコントロールしていくことが大切です。

まとめ
コーギーは、その見た目の可愛らしさに加えて、非常に高い知能と観察力、判断力を持った犬種です。牧羊犬としてのルーツがその賢さを形づくり、現代の家庭でもその知性を発揮する場面はたくさんあります。
ただし、頭がいいからこその注意点もあり、知的刺激をしっかりと与えないと退屈から問題行動につながることも。飼い主との関係性や環境が、コーギーのポテンシャルを引き出す大きなカギになります。
「犬と本気で向き合いたい」「毎日のしつけや遊びを楽しみたい」「賢い犬と意思疎通しながら暮らしたい」そんな気持ちを持っている人にとって、コーギーは最良の相棒となってくれるはずです。
もし、ただ“飼う”のではなく、“共に暮らす”という意識で犬と関わりたいのであれば、コーギーは間違いなくその期待に応えてくれる犬種です。愛嬌だけでなく、賢さでも人を惹きつける。それが、コーギーという犬の本当の魅力なのです。